高齢者の変形性膝関節症において、「手術は本当に大丈夫なのか」「高齢だとリスクが心配」などの不安を抱える方も少なくないはず。本記事では、高齢者の変形性膝関節症手術に潜むリスクや注意点を解説するとともに、手術以外の治療法や判断のポイントを紹介します。後悔のない選択のために、正しい情報を確認しましょう。高齢者に多い『変形性膝関節症』とは?変形性膝関節症とは、膝の軟骨がすり減ることで関節に炎症が起き、痛みや腫れ、動かしづらさ、関節の変形が生じる慢性疾患です。とくに高齢者の女性に多く、長年の膝への負担や加齢が主な原因とされています。高齢になるほど発症・悪化しやすい理由高齢になるほど変形性膝関節症を発症しやすくなるのは、以下のような理由からです。軟骨の自然な老化により、関節が摩耗しやすくなる筋力や柔軟性の低下で膝にかかる負担が増える骨密度の低下や姿勢の変化も関節に影響長年の歩き方の癖や体重の影響が蓄積される結果として、70代以降になると発症率が高まり、80代・90代では悪化が進みやすくなります。手術を勧められるのはどんなとき?以下のような場合には、医師から手術を勧められることがあります。薬や注射などの保存療法では痛みが改善しない歩行や立ち上がりが困難で、日常生活に支障が出ている変形が進行し、O脚やX脚が目立ってきた夜間の痛みや安静時の痛みが強く、睡眠にも影響する関節がロックする、膝が抜けるような感じがある手術は、「最後の手段」と思われがちですが、症状の改善効果が高く、生活の質を取り戻すための有力な選択肢です。主な手術方法と費用変形性膝関節症が進行し、保存療法(薬・注射・運動など)では改善が難しい場合、手術が検討されます。代表的な手術方法は以下の3つです。人工膝関節全置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)膝関節のすり減った軟骨や変形した骨を取り除き、代わりに金属とプラスチックでできた人工関節を全面的に取り付ける手術です。膝関節全体を新しい関節に取り替えるイメージです。【対象】膝全体の軟骨がすり減っている強いO脚やX脚がある歩行や日常動作が大きく制限されている【効果と特徴】痛みがほぼなくなるケースが多い歩行や階段の昇降が改善人工関節の耐用年数は約15〜20年程度多くの高齢者に実施されている安全性の高い手術【注意点】人工関節の摩耗や緩みが起きた場合は再手術が必要正座や激しい運動は制限される【費用(健康保険適用時)】総額:約100万円(税込)前後自己負担(1〜3割負担):約5万〜10万円(税込)程度(高額療養費制度利用時)人工膝関節部分置換術(UKA:Unicompartmental Knee Arthroplasty)膝の中でも内側または外側の一部だけがすり減っている場合に、その部分だけを人工関節に置き換える手術です。膝の自然な構造や靭帯を極力残せるのが特徴です。【対象】軟骨のすり減りが一部に限られている比較的若く、活動性が高い方膝の曲げ伸ばしがまだ保たれている方【効果と特徴】回復が比較的早い人工関節を入れる範囲が小さいため、自然な動きに近い骨を削る量が少なく、将来的に全置換術に変更も可能【注意点】適応できる人が限られる(関節全体が悪い人には不向き)長期的な耐用年数はTKAよりやや短い(約10〜15年程度)【費用(健康保険適用時)】総額:約80~90万円(税込)前後自己負担:約5万〜8万円(税込)程度骨切り術(高位脛骨骨切り術:HTO)膝の変形が原因で体重が一方の関節に偏ってかかっている場合に、脛(すね)の骨を一部切って角度を調整し、荷重のバランスを整える手術です。人工物は使わず、自身の関節を残すのが特徴です。【対象】比較的若い中高年(50〜60代)で活動量が高い人O脚など、変形が原因で偏った負担がある場合軟骨がまだ一部残っている【効果と特徴】関節を温存できるため、自然な動きが保たれる若い患者様に多く選ばれる選択肢手術後も運動やスポーツが続けられるケースあり【注意点】回復には時間がかかる痛みの緩和には個人差がある重度の軟骨摩耗には効果が薄い【費用(健康保険適用時)】総額:約80~90万円(税込)前後自己負担:約5万〜8万円(税込)程度入院・手術・リハビリの流れ手術を受ける場合、通常以下のような流れになります。術前検査(心臓・肺・血液・骨など)入院(通常1週間〜2週間程度)手術当日(全身麻酔または脊椎麻酔)術後翌日からリハビリ開始(歩行訓練など)退院後も外来でのリハビリ継続(約1〜3カ月程度)高齢者の場合は、回復のスピードに個人差があり、リハビリの内容や期間も調整が必要になります。手術費用手術費用は健康保険が適用されます。自己負担は以下の通りです。70〜74歳:医療費の自己負担2〜3割75歳以上:原則1割(一定以上所得者は2割)実際の自己負担額は、高額療養費制度を使えば 5〜9万円(税込)程度 に抑えられることが多いです※入院期間や部屋代、食事代は別途必要高齢者の膝手術における主なリスク高齢になるほど、以下のリスクが高まる傾向にあります。麻酔による心肺への影響合併症(肺炎・脳梗塞・深部静脈血栓症など)術後の筋力低下や認知機能の一時的な低下リハビリの遅れによる歩行能力の低下とくに80代・90代の方では、「手術そのものよりも、その後の体力回復やリハビリの継続」が大きな課題となります。高齢者の手術を避けたいときの代替治療「年齢的に手術は避けたい」「本人が強く望まない」場合には、以下のような保存的治療を検討するのも一案です。根本治療にはならなくても、痛みの緩和や生活動作の維持に役立ちます。ヒアルロン酸注射鎮痛薬・湿布杖やサポーターの活用筋力トレーニングや体操再生医療(PRP療法・幹細胞治療など)家族が知っておくべき「手術する・しない」の判断基準手術を検討する際、医師の意見だけでなく、本人と家族の意向をしっかり共有することが大切です。以下の点を参考にしてみてください。日常生活(トイレ・食事・移動など)がどれだけ支障をきたしているか本人が手術・リハビリを望んでいるか体力や持病の有無(心臓・糖尿病・脳卒中など)術後の介助体制(家族や介護サービスの利用)手術が可能でも、本人の気持ちや生活環境が整っていない場合、逆にQOL(生活の質)を下げることもあるため、慎重な判断が必要です。高齢者の変形性膝関節症手術に関する質問Q. 80代・90代でも膝の手術は受けられる?A. 健康状態が安定していれば手術は可能です。実際に80代、90代でも手術を受けて元気に歩けるようになった方は多くいます。ただし、術前の体力や持病の有無によっては慎重な検討が必要です。Q. 手術を受けないとどうなるの?A. 手術を受けない場合でも、すぐに命に関わるわけではありません。しかし、症状が悪化していく可能性は高まるでしょう。変形性膝関節症は進行性の病気であるため、時間の経過とともに症状が悪化していく可能性が高いです。「年齢的に手術は難しい」「本人が希望しない」などの理由で手術を選ばないケースもありますが、その場合でも放置は避け、薬物療法や注射治療・再生医療(PRP療法・幹細胞など)・運動療法(リハビリ・筋トレ)のような治療法およびサポートを併用することが大切です。Q. 自宅でできる痛み対策は?A. 「膝への負担を減らす」「筋力を保つ・鍛える」「家の中の環境を整える」といった点を意識しましょう。膝の痛みを和らげるには、まず杖を使って膝への負担を減らし、無理のない範囲で体重管理をしましょう。太ももの筋肉を鍛える簡単な運動やストレッチも効果的です。慢性的な痛みには温めること、腫れがある時は冷やすことが大切です。膝用のサポーターを使うと安定して歩きやすくなります。また、椅子やトイレの高さを調整し、転倒しないよう部屋の環境にも注意しましょう。痛みが強い時は無理せず安静にし、改善しない場合は医療機関を受診してください。高齢者の変形性膝関節症はラカンクリニックに相談!高齢者の変形性膝関節症でお悩みなら、ぜひラカンクリニックにご相談ください。当クリニックでは、一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた最適な治療プランを提案しています。手術が必要かどうかの判断はもちろん、手術を避けたい方には再生医療やリハビリなどの代替療法も案内します。安心して治療に取り組める環境を整えていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。あなたの膝の健康を全力でサポートいたします。